#5 
 
 
 
 
 
 雨が降りつづく。現実世界の秋葉原。

 殺害現場の喫茶のあるビルの外には既に警察官たちがパトカーでやってきて、
 現場のやじ馬の整理や現場検証をはじめている。
 携帯カメラで警官たちの様子を撮影しようとしているやじ馬。
通行人A 「あ?なんだこりゃ・・・」
 彼らのカメラが誤作動をしているらしい・・・
 雨はその勢いを増してきていた。人々は自らの携帯が操作できなくなっている。
 木嶋に待つように言われた少女は、歩道の脇の植え込みに座っている。
 髪も肩も塗れてしまっている。そのまま帰っても良かった筈だが、
 彼女はうつむいたまま、座りつづけている。

 携帯カメラの不調は電気街口周辺でも同じようにおきていた。
 TYU-KAの携帯を売っていた先の娘が、客に携帯の機能を見せようとして、カメラの電源が切れてくれないのに気づく。
売り子 「あれ・・・あれ?・・・っかしーなァ・・・」
 売り子を見つめる携帯カメラ。携帯背中側のTFTモニターUP。反転した街の画像。
 かすかに聞こえてくる断続した爆発音・・・

サブタイトル

 爆発音。
 ミラーワールドの秋葉原にも雨は降り続いていた。
 ドグマスパイダーによる連続攻撃で、ライダーの背後で再度起こる爆発。
 ライダーはその都度、爆風に自らの羽を煽られ、前方に吹き飛ばされる。
ライダーVi:「!!」
 路上にうつぶせに倒れたライダー、敵の方角を振り返るように起き上がる。
 が。すぐ傍にある電化店の店頭にならぶビデオカメラがVi:を見つめていた。

 一斉にライダーの姿がズームされ、店頭のいくつものモニターTVにVi:の姿が大きく映し出されていた。
Vi:「そんな・・・!」

 さらに前方からモンスターのミサイルがホーミングされる。
ライダー「そういう事か!!」
 例えミラーワールドにしろ、この秋葉原に存在する大量のCCDカメラ群をモンスター達が操作できる事は常軌を逸しているが、木嶋には自らの目で見た事が事実でしかない。
 駅の方角からドグマスパイダーが2匹、線路を超え、手前の店舗ビル群の上を伝ってくる。
 瞬時にライダーは手近にあった道路標識を引き抜いたかと思うと、ひざで一瞬に折り、抜いた先端部分をビル上の一匹に投げつけた。
モンスター「グゴオ!」
 ライダーの強靭な力が長い道路標識の金属パイプを凶器に変え、モンスターの腹をぶち抜いた。
次の一匹が路上に降り立ち、ライダーに向かってきた瞬間、ライダーはジャンプし、すれ違いざま標識パネルのついた方でもう一匹の首をハネ離脱した。
 背後で2匹のスパイダーが爆発を起こす。
 ひるむスパイダー群。その時ライダー頭上に響く爆音。
ライダー「!」
 頭上に飛来するタンクホーネット。
ライダー「遅ーいっ!!」
 ホーネットはすまなそうにBeep音を鳴らす。

 ライダー、ジャンプ。デッキからカードを引き抜く。
ビートバイザー「シュトルム ベント」
 ホーネット主翼の分身体がライダーの羽上のジペッドスレッドに装着される。
 ライダーに装着される銀色の翼。
 ミサイルと蜘蛛の粘着糸を大量放出するスパイダー。高速飛行形態のライダーはきりもみ飛行でこれをかわし、
 音速飛行で更にビル壁面のもう一匹のスパイダーとすれ違う。羽から放出される衝撃波。離脱。
 モンスターは一瞬に体表の甲殻皮を切断され、砕かれる。ビル壁面で大爆発。
 ホーネットからドグマスパイダー達へのミサイル絨毯爆撃。
 ひるむスパイダー。Vバックルからカードを引き抜き、ライダーは上空からファイナルベントを試みようとする、
 だが、その一瞬どこからか一匹のスパイダーがライダーの身体に多量の蜘蛛糸をあびせかけた。
 ライダーはその糸にからまって墜落する。

 墜落する一瞬、ライダーは ”やはり蜘蛛型だが、別タイプの大型モンスターが、駅前の建造中だった(水崎と最初に駅を降りた真正面の)ビル”の真上に、根を張るようにして乗っているのを見た。
 その蜘蛛糸から逃れるように、ライダーVi:は万世橋警察署の裏手の神田川に墜落していく。

 川に墜落したライダー。ライダーは羽を濡らしてしまう。雨程度では戦闘への影響はない。が、川の水だと話は別だ。
 ビルづてにまたもライダーに接近するドグマスパイダー群。一体のモンスターが警察署に足をかけた瞬間、
 ライダーは怒りに震えると同時に万事休すかと思ったが、何故かモンスターは近づこうとしない。
ドグマスパイダー群「グル・・・グルルルrrr・・・」
 見るとライダーとホーネットのニードルに傷つけられたモンスター群の傷口が、雨水がしたたる度にパチパチと細かくスパークしている。
ライダー「!?」
 橋やビル群の上から撤退していくドグマスパイダー群。息を切らせながら水の中からよろよろと立ち上がるライダー。
ライダー「なんなんだ・・・・・・あいつら・・・・・・」


 木嶋、ミラーワールドから、殺害事件のあったマンガ喫茶の3Fに戻ってくる。自らの手も足も無事なようだ。部屋にはすでに警察の科研の人間が来ていた。
科研職員「消毒班は必要ありませんね?」
 ひきつった笑いで見送る科研職員の一言が痛い。
木嶋「は・・・はい;」
木嶋、会釈しながら階段へと向かう。

 木嶋が雑居ビルを降りると、そこは多数のやじ馬でごった返していた。
 先の少女が気になっていた木嶋、少し離れた植え込みに少女が座っているのを見つける。
 声をかける木嶋。少女と目が合うが、すぐに彼女は目を伏せる。
 伏せるというか、視線が一定していない。また眼振を起こしている。
 彼女はそのままだと挙動不審者にすら見える位だった。

 やじ馬の間に身長160cm程の背の低めの眼鏡男がいる。
 オタクっぽくはあるのだが、けして金に不自由ではないように見える。
 何故かその男はラグビーのヘッドギアのようなものをつけている。見ている刑事
刑事A「ありゃ、なんだ?」
刑事B「前どこぞの宗教団体がつけてたヘッドギアに似てますけど・・・だったら疑われるような物を身につけるわけもないし、ファッションでしょう。大体ここの事件はモンスターの・・・」
刑事A「シッ!」
刑事B、口を塞ぐ。

 少女、意を決して立ち上がり、パンツのお尻をパンパンと叩いて、顔を上げる。が、一瞬にして少女の顔が蒼白になる。
 振り返る木嶋。そこには三人の風采の上がらない男たちがいた。
 あの喫茶店で木嶋の後ろの席にいたオタク達だった。

男C「エリちゅあああん。コンなトコロにいたの〜〜」
 へらへらしている男たち。
 一人は目だし帽をかぶった、黒ぶちメガネの中年太りの男(A)
 もう一人は顔に醜いしわをきざんだ短髪の二十代らしき、やはり太った男(B)
 三人目は小柄で痩せ切った爬虫類のような顔をした男だった。(C)
 全員目をぎらぎらさせて少女を見ている。

 どうにもその内の2人は体脂肪率が異常に高そうだ。平均35〜40%はあるのではないか?
 こいつら近々脂肪肝か血栓で死ぬな、と木嶋は直感した。
 直感はしたがそれ以前に・・・この少女が「エリ」と呼ばれている事が喫茶店の少し食い違っている気もするのだが。
 木嶋は男たちと少女の間に割ってはいる。
 木嶋は少女を背中にかばおうとするのだが、少女は男たちどころか木嶋とも距離をおいて、おびえているようだ。
木嶋「・・・・・・・・・?」

男A 「のいてくんないかなぁ〜。お仕事あるんでしょ?検死官ならぁ」
男C 「警察の犬は死人の相手をしてればいいんでつよ」 
男B 「その娘の事はおれら父親よりも知っているしなぁ」
男A 「俺たちに夢を売るネトアの癖に色恋なんざ生意気なんだよ!」
男C 「その女は金次第で誰とでも寝る痛い女なんですよワラ」
男B 「しかも合ドラもキメているんだつ!!」
男A 「自らのHを金で男に撮らせている淫乱なんだよ!わかってんのかゴラ」
男C 「詳しくは我らの掲示板スレを見ていただければ分かりまつ!」
男B 「無数のハメ画像という証拠もあるのでつよ?」
男A 「そのくせ男の選り好みはする、と・・・(メモメモ」
男B 「・・・・・・売女が!!」
怯える少女の顔から血の気が失せ、青い唇ががたがたと震え出す。


 木嶋はカッとなりそうになるのを押さえる。
 変身直後の木嶋の身体は、意識的に通常の力にセーブできるまでに約5〜7分を要する。
 普通ならパワーダウンしていてもよさそうな頃だが、混戦が長引いたためにまだ戦闘力が解除されない。
 解除直後の力はライダー時の半分程度だが、それでも指先ひとつで突きを食らわすだけで
 その指先の力は2トンを超え、オタク達の上あごから上が吹っ飛ぶか、首が飛ぶか、内臓が全破裂するか、何にしても周囲が血の海になるのは間違いない。

 耐える木嶋。耐えるだけで筋肉がきしみそうになる。
 まだパワーダウンまでの時間的はかかりそうに思えた。
1課の刑事「君たち!これ以上続けると警察で話を聞くことになるぞ!」
男B「ほお。ナニで?刑事で?民事で?ふざけろよこのヤロオ」
男C「私たちは事実を言っているだけでつよ」
男A「警察は民事不介入ってコトを知らないのチミィ」
 げらげら笑う男たち。
木嶋 「俺は警察じゃないしな・・・」
 木嶋が腕を反応させかけた。もう限界だった。その瞬間、

 背中から木嶋の肩を叩く影があった。
要 「アルト」
 その一言が、木嶋を人間のルールに踏みとどまらせた。


 要が男たちを殴った。
 男が顔面から打たれ首をねじりカットされる。
オタクB 「ぶ、ブタダーーーー!!!」
 殴られたオタクAにかけより叫ぶオタクB、C。
 オタクBも要に顔面を打たれる。二発目は裏拳だった。元々小さい鼻から脂ぎった血が噴出す。
木嶋「ぶ、ブタ?」
木嶋には意味がわからないが、あまりの事に木嶋から闘争心が薄れた。
オタクC 「警察がそんなことしていいと思ってんのか〜!!」
 要は冷静にすっとぼけた。顔はあくまで厳しい。
要警視正 「・・・?誰か見たか?今の」
刑事&警察官全員  「いいえ!見ていません!警視正殿!」
 あっけに取られるオタク達。彼らは要が「治安維持指揮室」の「情報隠蔽のエキスパート」である事がわかっていない。
 笑える余裕ができてきた木嶋。一瞬腕の力が抜けたのを感じる。
木嶋 「あ。治った」
 即座に抗議した男Cを軽く殴る木嶋。
 男Cの身体が5m後ろに飛ばされる。今時の人間らしく、受身を取れずにひっくり返る。

男ABC「ひぃい、イテェ!イテェよ〜〜」
 警察、木嶋たち、少女、秋葉原駅方面に背を向け、昭和通りを北へ退散していく男たち。
刑事 「ばっきゃろ〜〜〜!!二度とくんな〜〜ッ!!」
 思いっきり笑う木嶋と1課の刑事たち。一人要だけが厳しい顔である。

 少女に近づく要。
要 「君は、高校生なのか」
少女「は、はい」
 驚いて少女は本当の事を言ってしまう。 その一瞬、要が木嶋が持っていた履歴書を奪う。
木嶋 「あ」
 少女の履歴書を見る要。履歴書の年齢欄には18歳と書かれているが、経歴は中卒になっている。
要  「・・・・・・それで、本当の名前は?」
少女 「絵理花・・・・・・」

 だが、要はそれすら信じていない気配である。要、警察手帳を胸から出して少女に提示する。
要  「こういうモノなんだが、いいかな?」
木嶋 「ちょっ・・・職質かける気・・・?」
 考え込む木嶋、少女の視線上に指を立てる。
木嶋「・・・三択です。ここで後ろにさがってあいつらとまた出くわすのと、このままコワーイ警察のおじさんに職務質問受けるのと、僕とこの場を逃げるのと、どれを選ぶ?」
 頭を掻く要。
要 「おぢさんってなァ・・・・・・」
 少女、不安げに驚く・・・

木嶋   「じゃ、いってきまーす」
要     「・・・・・・」
1課の人々「ヘンターイ!ヘンターイ!」
1課の人々「ロリコーンかよー!」
1課の人々「援交かよーーー!!」
 木嶋にやじが飛ぶが、みんなゲラゲラ笑いたくて仕方ないようだった。
 木嶋が要をぎゃふんと言わしたのがよほど嬉しいらしい。
 木嶋は少女の手をひきながら、秋葉原駅へと消えていく。
 その時見送る要の所に息を切らせながら水崎が駆け寄ってきた。
水崎  「ああっ!遅かったーーっ!!」
要   「?」

 その光景を見ていたヘッドギア男、立ち去る。


 地下を走る列車。
 木嶋と少女は出入り口の左右に分かれて立っている。
 木嶋は優先席から離れている事を確認しつつ、携帯からあちこちにメールらしきものを打っているようだった。不器用な指を少女が見つめる。まるでそれは左利きの人間が無理に右手でメールを打っているようだった。
 地下に流れていく非常灯の群れが少女の顔を照らす。
 ガタタン・・・ガタタン・・・ガタタン・・・・・・・と、音。


 一瞬明るくなる景色。まぶしそうにする少女。
 二人が地下鉄の駅から地上に出たようだった。
 街の景色。青山、表参道の景色。


 駅を出た二人が、歩いていた。
 少女はいきなりの事でキョロキョロしている。挙動不審少女が肩をビクつかせる。
 勘違いしてるなぁと思う木嶋。青山骨董通りに入ってしばらく行く。
 喫茶店、雑居ビル、シックなレストラン、大理石の彫刻や貴金属、調度品を扱った店・・・
 バブル期の豊かさを感じさせるとは言え、一時期の騒乱も過ぎた其処は、
 表通りに比べれば、意外と静かな街になっていた。
木嶋「あ、いい店・・・。こんな店で食事もいいよね・・・」

 そこは一軒の、西洋アンティックな雰囲気の喫茶店だった。
 かわいいカップやお皿がならんでいて、店内には油絵も飾っていたりする。
 扉の向こうに見えるウェイトレスの服も、先のパフェほど露出度がないにしろ
 とても清楚でかわいく、輝いて見える。
 場所がらにも合っている気がするし、とても雰囲気がいい。
リカ  「こんな所で働けたらな・・・」
木嶋  「ふーん・・・」
 どこからか逃げ出したい、という風にその言葉は聞こえた。5分位眺めていただろうか。

 その瞬間、目前の喫茶店「べるさいゆ」から長い髪の別の少女が飛び出してきた。
少女  「時間が!時間が!遅れる!遅れる〜〜っッ!」
 全身ブラウン系のヨーロッパスタイルで、軽くフリルのついた服、
 なんと異常に大きな懐中時計を首からぶらさげている。
 ゴシック調ともどこか違う服のようだった。
 耳に白いイヤーワッフルをつけているのが、まるで兎のように見えた。
少女  「しまった〜〜〜〜!!単位が!単位がぁーーーー」
 骨董通りの入り口方面(木嶋たちのやってきた方)へ一目散にかけていく少女。
 ぽかーんとする木嶋とリカ。
木嶋  「学年末だからかなー・・・・・・」
 その一瞬、木嶋の耳にとても小さな共振音が聞こえた気がしたのだが、
 木嶋は”ああいう電波少女も世の中にはいるよな”的なことを考えて、ほおって置くことにした・・・


木嶋「あ!もう時間が・・・!!」
リカ「時間??」

リカ「ここは・・・・」
 あまりの事に開いた口が塞がらない。
 青山第一総合病院。法人経営の総合病院である。
木嶋  「自分診てもらいに来たんだけど、君もつきあってよ。一人じゃ不安でさぁ・・・;」
少女  「・・・・・・」
 少女は不信に思ったが、事実木嶋は少し怖がっているようだ。

 7Fにまで上がって行く木嶋たち。廊下をあがって行くと
 部屋の上には「心療内科オフィス・倉田」のボードがかかっていた。
少女「心療内科・・・?」
 コンコン、とドアを叩くと、中からパタパタというスリッパの音がして、
 軽い香水の匂いとともに、白衣の女が出てきた。
 倉田沙貴子。木嶋の城空大学での上級生で、木嶋の主治医である。

倉田 「木嶋、ひっさしぶりね〜〜!♪どこいってたの〜?」
木嶋 「いや、東北とか、四国とか、アフリカとか、アメリカとか、でも結局は寒村ばかり色々と・・・」
倉田 「あははー(笑;)・・・・ときに、その子?電話の話の・・・」
 少女を見る倉田。
リカ 「あの・・・お金ないんですけど・・・」
倉田 「ん、いいのいいの。入って。」
 オフィスに入っていく倉田とリカ。木嶋は外においてきぼりにされる。


倉田 「時間外だし、木嶋くんの紹介じゃお金は取れないから、大丈夫よ?・・・・・どうしたの?」
 優しく少女に話し掛ける倉田。
 少女あたりを見回す。部屋の中は診察室兼オフィスのようだった。
倉田 「お茶にでもする?」
 木製のモビール(鳥や飛行機の形をした)が天井からぶら下がっている。
 昼間なのにカーテンがひかれた部屋。やわらかい光がカーテン越しに注いでいる。
 脇でやかんがしゅんしゅん音を立てている。
倉田 「いやー、軽く風邪引いちゃって。医者って不養生なものなのよ、ホント。加湿器ほしいわよねーここにも・・・ケホケホ」
リカ 「・・・・・」
 テーブルの上には色々恋愛小説じみたものが並んでいた。
倉田 「やっぱ恋愛でしょ。恋愛。」
リカ 「そんな年になっても、そうなんですか?」
 倉田、少しこめかみをひきつらせながら答える。
倉田 「 こ ん な 年 で、少しはただれた道も歩いてきたから、そうなのよ♪」
 脇に別積みされたやっぱり恋愛小説文庫本をひっくり返して著者近影を見るりか。
 それはなんと倉田本人だった。
リカ 「え?ええ??」
倉田 「バイトバイトーー♪」
 えっへーん、と力こぶを作るポーズをする倉田。
 テーブルの上にハーブティーが置かれる。
倉田 「さーて、肩の力抜いてねー♪」
 ひざで足組みをした倉田のひざが少女のひざに触れる。
 組んだ方のつま先の上で揺れるスリッパ。

 −10分経過−

 本音とタテまえが交錯する少女のセリフ。
 少女   「でも、別にいいじゃん・・・誰にも迷惑をかけてないんだし。殺人みたいな醜い事やってるわけじゃないんだから。風俗にしよーかとも思ったけど、さっきからAVの方がギャラがいいかなぁ・・・なんて。後悔するような人生送りたくないし。それに職業に貴賎は無いって、マンガでだって・・・」
倉田 「マンガはマンガ。現実じゃ無いでしょ?」
 キラキラと彼女の手元でまわる銀メッキのペンの反射。無意識の内に鳴っている離れた机のメトロノーム。
 彼女の「催眠」は既に始まっている・・・・
 外であくびをしている木嶋。眠いのか、というより、それは眠って話を聞くまいと、努力しているのかもしれない・・・


 −30分経過−



リカ  「・・・で、ホームページ作って。私おしゃべり下手だし、インターネットはじめたのだって、結局友達がほしいからだった。それで自分のホムペ作ってたら、男の人たちが色々寄ってきて、「ネットアイドルサイト」に登録すればいい、って言って。バイトしてる店の宣伝にもなる、って・・・
     かわいい服着るのも見るのも好きで、それだけだったのに・・・掲示板つくったら、すぐオフ会開いて、とか言われて、すぐカレシができて・・・本気だっていわれて、ラブホで写真撮られて、でもなんか合ドラまで誘われて断って、気持ち悪くなってきて別れたら、その写真がいつのまにかいろんな人に見られて・・・・・
     まだ、二人目だったのに・・・最初は本物一枚だけだったのに・・・・その内アイコラまで作られて・・・・・・何人とも・・・・ヤリマンとかボードに書かれて・・・。

     その内、トイレや更衣室の中まで盗撮されて・・・・

     それで別の店に逃げたのに・・・・・最近また自分見てニヤニヤする人達が増えて・・・・・また匿名掲示板で仕事場バラされて・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

倉田「・・・・・・」

リカ 「パパがムセンの店やめて、それでもパパといっしょに過ごしてたアキバが好きで、中学生の時からずっと自分でネットの事とかCGIとか勉強してきたんだよ?それなのに、何で自分があの街離れなくちゃならないの・・・?」

倉田  「しっかし・・・ヤプーが消えても人間って変わんないね。わかっちゃいたけど」
リカ  「?」
倉田  「・・・何にしたって、男性恐怖症なのに下半身関係の仕事は無理だよ?それに無理になおそうってのも良くないし。それ、治るじゃなくて、壊れるってことだよ?」
リカ  「・・・・・・」
倉田が意外な話をもちかけた。
倉田 「逆行催眠、やってみようか・・・?」
リカ 「・・・」
倉田 「ほら。私あなたの本名も何も知らないし何か知ったとしても他人なんだから♪路地裏の占い師知ってるでしょ?あれに見せると思えばいいのよ。ひやかしひやかし♪」



 50分経過


 オフイスのドアが開く。廊下のソファーで座って待っていた木嶋、顔を上げる。
 少女はきょとんとしている。別段さっきと何の変化も見当たらない。逆に何も自分の身に起こっていないのを疑っているようで、自分の服だの、髪型だの、ファッションポーチの中だのを気にしていたりする。
倉田  「どう?」
リカ  「なんかすっきりしました。まだ眠い感じ・・・・・・」
倉田  「おっけーおっけー・・・・・・あっ」
倉田がニヤーと微笑みを浮かべる。ぞぞぞぞぞとなる木嶋 
倉田  「次は、あーなーたー♪」
木嶋  「さようならっ!」
倉田「だあーめ。逃がさないんだからん♪」
倉田女医は後ろから木嶋の白衣の襟と後ろ髪をまとめて引っ掴む。
木嶋「ああっ!」
 バランスを崩してぐいっと診察室に引き込まれる木嶋。少女に声をかける倉田。
倉田女医「待っててねー」
 バタム!とドアを閉める倉田女医。表で唖然をする少女。


 秋葉原、綾瀬の店「ソリッドカスタム」
 戻ってきた水崎は要と携帯で話している。
 水崎 「木嶋さんの見たビル上のデカブツってのは、「こっちの世界」でいう建造中の『秋葉原ITセンター』上にいたって事まではわかったんですが、、、ええ。まぁそれをどうするにしたって、第一小物すらまともに倒せてないってのは・・・あ、そんなことは、すいません。はい・・・」
 がちゃっと電話を切る水崎。
 水崎 「ああ!モンスターもそうだけど、木嶋さんもなんであんな女なんかに!」
 キーーとなっている水崎。綾瀬、「?」。
 綾瀬が話しを切り出す。
 綾瀬 「そういえばさ、面白そうだったんで、君のカードのデータ検出してみたんだけども」
 水崎 「?」
 なんと、水崎が預かっていた「コントラクト(契約)」のカード(ミラーモンスターとの契約時に使う、あれ)には既に端子がつながれていた。
 木嶋から「必要ない」と言われ預かっていたのだった。
 綾瀬 「チップのクロック帯やIDから見るとそれの中にも「インテグラル社製」が使われてるんだよなー。わけあり?」
 水崎はあっけに取られた。

 青山第一総合病院。心療内科オフィス。
 木嶋、トタんとソファーに座る。倉田はカーテンを開ける。湯のみを持ち去り、銀のペンをポケットにしまい、
 少し椅子の位置を変えるだけで、部屋の様相ががらりと変わった。
 さっきまでの眠たげな部屋の雰囲気は催眠用の彼女の演出だったのだ。
 部屋の流しに置かれたポットに向かう倉田。
倉田 「えーっと、何にする?」
木嶋 「コーヒーはちょっと・・・ちょっと落ち着きたいんで」
倉田 「知らないの?紅茶にもカフェイン、入ってるんだよ?」
 ポットからティーカップに紅茶をそそぐ倉田。
 紅茶の匂いを嗅ぐ木嶋。

倉田 「お医者も心の病になるときはある・・・と。だから勤務してるお医者のカウンセラーって事で、ここに招致(らち)されたんだけどねー」
木嶋 「高給取り?」
倉田 「そこそこ。新進気鋭でマスコミでも有名な精神科医も、心療内科に鞍替えで新人同然」
 それにしたって、倉田の適応能力は常人ばなれしていると思う木嶋。
 そういえば倉田先輩はその年度の卒業生では主席だっけか・・・?
木嶋 「彼女は・・・」
倉田 「掲示板の書き込みを逐一チェックして半年も徹夜が続いた事による神経症と、君の電話の連絡からだと、パニック障害の一歩手前まで来てるみたいだけれど、本当はそれよりも・・・鬱質と分裂質が併発で出てきているってのが実質。」
 木嶋には気づくことができなかった。強い肉体では弱者の気持ちにはなれないのか。
倉田  「ま、躁鬱病になりかけで、鬱の面が出てきてるんだ、深く悩むのはよそうね、って言ってあるけど・・・・・実際すでに病気の初期段階は終わりかけ。いつ話を切り出すかが問題よね。とりあえず私用のドグマチールとか少しの薬と名刺は渡して、「連絡いつでもいいよ?」って。分裂気質っぽく見えるところは思春期の特徴だから、とりあえずは木嶋も気にしなくていい。」
木嶋  「で、あの女の子の退行催眠の結果は?」
倉田  「それは守秘義務。言えませ〜ん」
 少女の過去については、倉田は教えてくれなかった。
倉田  「住所と名前は教えていただきました(^^) 役得役得〜ん♪」
 倉田は両刀だった。木嶋、なんだかなー、と思う。
倉田  「木嶋くんのおせっかい、移っちゃったよ。・・・でも、知らないまんま一人悩むよりいいし、あなたよりは軽い軽い!早期発見できて良かったよね。」
 頭を下げる木嶋。
 彼女の医療にかける情熱と、患者へのいたわり、それは真実である。

倉田 「例え木嶋君のIQが他の人間とは比較にならない数値を示してたって、ひとつの事に情熱をかけてるならともかく、外科医療も内科もDNA薬事もやってたら一つにかけられる情熱と頭脳のパーセンテージは限られる。4年前の件でどれもこれもこなした段階で無理をしてるし、「戦い」もそう。IQの許す戦闘のキャパシティーがいくら高くても、デスヤプーと戦ってた時みたいに「1対大多数」の戦闘なんてやって、普通は勝てるわけなんてないのよ。相手も悪事では異常脳だし。木嶋君が勝ちつづけたのは「強いから」だとみんなには思われてるけど、実際は普通の事でも何でもないんだよ?それにあなたには「臓器全反位症候群」っていう持病があるんだし。そっちは私の関する事じゃないけど、見てる方がつらくなっちゃうのよ。主治医をつらくさせて、迷惑かけ放題よ?(ムカプン」」
 倉田には申し訳ないと常々考えているし、しかし性格はどうなるものでもないので木嶋はこの病室にくるのが辛かった。毎回が約束の破りっぱなしだからだ。しかも木嶋は既に外の少女が気になっていた。
倉田 「それも私の見ている病気の一因ではあるわけだけだけど・・・本当は体内のレントゲンとかもかけて1週はドックに入れたい所だけど・・・・・まぁ、君の病気は結局「彼女」にしか治せなかったんだけどね」
 医師としての倉田の無力感。
木嶋 「そんな事は・・・・」
倉田 「要は・・・個人の手に余る研究や戦闘行為をしなければ、再発することはないの。たとえこの世界の「人間」の「悪意」が変わらなくたって、最悪の力でそれが行使されるのは防げたんだから、あなたは気にしない事。あの子がひどい目にあったのはあなたのせい?違うよね?」
木嶋 「はい。」
倉田 「なら、ダイジョーブ。今言葉も普通に話せてるし、字も書けるんでしょ?」
木嶋 「敷山氏とはどうなんです?結婚しないんですか?」
倉田 「話を逸らすかって・・・・・・んー、どうしよー。彼、セクース淡白だっしー」
 思わずミルクティーを ぷーーーっ と噴出す木嶋。
 しげしげと木嶋を眺めながらいたづらっぽく微笑を浮かべる倉田
倉田 「ウブだなぁ・・・、彼女じゃなくて君が直さなきゃダメよ?それ・・・。」
 倉田の暴走は止まらない。
倉田 「でもこの街の患者ってのも駄目駄目でねー・・・地域がらみんなハイソな方々や企業人が多いじゃない?バブルも終わって仕事そのものも立ち行かなくなってる街ではあるから、ビジネスマンがみんな神経症になっちゃって。しかもモノカネしかしらないエコノミック連中がそろってるから「人間性を開放しなさい」なんつーとみんなセックスに流れるし変態プレイや売春や援助にいっちゃうわけで、逆にやたら高い薔薇の花束抱えて誘いに来たり・・・泣き入っちゃうわよ!先の子みたいな女の子男の子を診てる方がよっぽどましよねぇ・・・」
木嶋 「あああ・・・・(;;)」
 だうー。
倉田 「まぁ変態医者の軍団でないだけマシか。変態はともかくフェアじゃないのは卑怯よっ!ときに・・・・・・いいバイトのクチあるんだけど・・・・」
 まるでなまめかしい赤い生き物のような彼女の舌が蠢く。
 ぞっ。
木嶋 「・・・ノーサンキュー!」
倉田 「・・・開放した方がいーのにー(p 」
 木嶋、お辞儀をして医療カバンをひっつかみ部屋を出て行く。
リカ 「終わったんですか?」
木嶋 「終わった。いこいこ。」
 白衣の木嶋と少女、左手で少女の手を引き廊下をさっさか歩きだす。
 オフィス外に出てきて叫ぶ倉田。
倉田 「こらーーーロリコーーーン!また来るのよーーーーーッ!!」
 真っ赤になる木嶋。
廊下の子供 「ローーリコン、0てーーーん!♪」
 廊下中の人々にロリコンと認知された木嶋は顔を伏せて医局を後にした。


リカ 「主治医さん・・・?」
木嶋 「うん・・・」
催眠から目の覚めた不思議に透き通った目で、木嶋を観察している少女。


 おじぎをして出ていった木嶋を思い出す倉田。
 ぺこぺこしていた美原を思い出す。
倉田  「あの仕草・・・彼女そっくりだったなー・・・ウププ」
 オフィスで、ファイルから出した木嶋のカルテを繰りながら眺めている倉田。
 白い光のオフィスの机の上に頬をうずめる倉田。ひやっとする感触。ほほえむ倉田。
倉田  「心に死の灰が、もう降らないといいよね・・・木嶋くん」



 都内環状線。
 山手線の電車内、先のデブ男達3人が、座席に座り卑猥な嘲笑いを浮かべながら、
 中央の男のノートパソコンを見入っている。
男B「どうするよ、あいつら」
男A「くくく、警察の悪行!とでも言って晒してやるさつ!」
 ノートパソコンはコードでモバイル携帯につながれ、その画面には
 ネットアイドル関係のページや掲示板がいくつか開かれていた。
 それらはアンダーグラウンド系のサイトらしく、カテゴリーには水着、下着、盗撮、トイレまでもが並ぶ。
 ところが、その画面が暴走していく。アイドルページから次々と様々な画面が開き、暴走を開始する。  やっきになってクリックやドラッグを繰り返す男たち
男C「おい、俺たち逆探されてないか?」
男A「くそいえ。ケータも鯖も「とばし」で、電車の中だぞ。」
 最後に開いた真っ黒なウインドー。そこから突然、モンスターの口が現実世界に開いた。
男たち「ウアアアアア!!!!」
 ガキ・ボリ・グシャ・ムシャ・・・・
 響く乗客達の悲鳴。走る列車の窓に赤い血飛沫。脳漿が飛び散り、眼球が床に転がる。  それすらもモンスターの触手がすすり上げる。
 次の駅に電車が到着する頃には既に男達の上半身は、この世から消えていた。

(2003_11/24 up)




アイキャッチ
 
 
 
 無人の列車内。血まみれになった山手線の座席。近づくサイレン音

 がばっと飛び起きる倉田。

 警視庁の治安維持指揮室まで戻ってきている要。
要   「わかった。列車からは全員退出させドアを即時閉鎖しろ。JR線への手配で非常ダイヤへの切り替えは既に終了している。予定通りなら10分後には通常ダイヤに切り替えられる筈だ。事件車両はそのまま品川車庫まで回送電車として運行。私と科研職員も品川まで急行する」
 携帯を切る要。フー、とためいきをつく。指示を受けた警察職員たちが次々と部屋を出て行く。
 そこに電話がかかってきた。
倉田 「逆・裏・対偶って判る?」
要   「・・・・・・時間が無いんだが」
 
倉田 「手短に話すわ。仕草みればわかる。瞬発的にあの娘と左手はつなぐのに、私との右手での握手はしない。木嶋君の右脳と左脳は逆・・・・・つまり自分の手が汚れてると理性で思っていて、加えて私に対して「やましい事」があるって事。私に握手できない位やましい事なんて一つしかありえない。ズボンについてたガラスの破片は何?背中の筋肉の硬直具合、素人でもわかるよ?・・・」
 倉田のテーブルには二つのカルテがあった。
倉田 「彼の能力のポテンシャルはあなたも私も知っている。でも彼が薬事や戦闘において能力を発揮すればする程、生命活動に直接関係の無い計算脳波の占有量は肉体の限界を超え、記憶容量は現実把握の生理領域を侵し、結果的に身体機能を阻害する事になる。それを解決する為の薬がX2。身体を完全にニュートラルな状態で加速域に維持し続けるX2は、彼の心を一定のテンションに維持する事を不可能にしてしまった。どんなに感情を乱す事があっても、どんなに喜んでも悲しんでもそれらは彼の心に留まらず、変容しつづけるVi:の身体は彼からたった一つの「魂」を失わせてしまった。根本的原因は・・・彼の理想である「医療」に全く反する行為を、私たちが彼に強いた事。彼が命を助ける以上に、彼に命を奪わせた事。」


  木嶋とリカは秋葉原駅まで戻って来ていた。
  途中木嶋のおごりで軽い食事を取って、その食後に倉田女史からもらった薬を飲んだので、リカは平静。
木嶋  「倉田さんに言われた通り、今日明日はコーヒーもネットも禁止だよ?」
リカ   「・・・刑事さんに取られた履歴書どうしよう・・・」
  履歴書についてまだ気にしているようだった。話を切り出す木嶋。
  雑踏で身振り手振りで会話する二人。何かの段取りが決まったようで、木嶋と少女が笑顔になる。

  秋葉原の綾瀬の店、「ソリッドカスタム」に木嶋が戻った頃には、既に午後6時をまわっていた。   つっぷしている水崎が顔を上げる。
水崎 「おそーーーいいーーーーー!!!」
木嶋 「ア・・・ハハ・・・・・ハ・・・・仕事は?」
  水崎、TVを示す。柴崎駅からのキャスターの中継だった。
Nアナ「本日、JR山手線車内の殺人事件が起き、乗客が一時パニックとなった現場です。多くの報道陣がつめかけましたが,目撃者は全員鉄道警察隊に保護され、マスコミの取材も一切許されぬまま、事件車両は車庫に入った模様です。」
水崎 「走り続ける山手線車内じゃ、追いつきようがないですけど・・・」
  だるそうにあくびしている水崎。木嶋がショックを受けている事に気づいていないようすで、その為綾瀬は少し不機嫌そうな顔をした。
  水崎はバイト少女の事が気になっていた。が、リモコンのスライドスイッチをビデオに切り替え、
  録画してあった別のTVニュースに巻き戻す。流れる映像。
Nアナ 「本日昼2時40分ごろ、都内秋葉原全域において、一部の携帯電話のカメラが一斉に誤作動する事件が発生しました。暴走を起こしたのは各メーカーが秋葉原で路上配布した試供品の最新型携帯です。各消費者サービスには数百件を越える電話がかかり、メーカーは対応に苦慮・・・」

水崎 「とにかく無操作の状態で勝手に電源が入って、気づくとガンガン通話料金がageりまくり。ここしばらく同様クレームあったらしいですけど、今日のは相当盛大で、不良品回収だのなんだの・・・。さっきの駅前の子に1個借りてきたんですが・・・」
  傍らで携帯を分解している綾瀬、片目につけていた拡大鏡をはずし、両腰に手を置く。
綾瀬 「・・・この携帯、簡単な構造の3Dチップが使われてるよ。これもインテグラル製タイプだけど・・・汚染の気配があるね・・・・・・偶然もここまで重なるってのは」
  綾瀬は先のショーウインドーの試作チップを見る。
  その時店の電話が鳴った。要警視正である。
  綾瀬、店の電話の手ブラボタンを押す。要に尋ねる木嶋。
木嶋 「木嶋です。列車事件の被害者、誰なんですか?」
要  「水崎に既に話してある。」
  要は遺物として残されたオタクの免許証から、昼に秋葉原で出会ったオタクたちが食われた事は知っているが、木嶋に言っても責任を感じるだけだと思っている。
要 「・・・1課と2課の調べで被害者の間に特定の共通項がある事が判明した。・・・・・木嶋、『とばしサーバー』って、知ってるか?」
  要、話し出す。
要  「やり口はこうだ。まず、他人名義の偽造身分証明書を使って、マンションなどを借りる。借りたマンションに架空会社を作り、数名の架空社員が偽造身分証明書でクレジットカードを作る。それを使ってサーバーをレンタル、有料プロバイダーとして「インターネット中傷」に顧客利用させ、彼らから使用料を稼ぐ。マンションは既に空っぽだ。問題が起こっても住所を調べられなければ中傷し放題・・・というのが2課の調べた結果なんだが・・・当然犯罪だよ。偽会社が警察から逃走した後、カード会社から一時的に引き落とされるサーバーレンタル代金についても詐欺罪が成立する。一昨年大規模匿名掲示板が潰れてから始まったビジネスらしいんだが・・・」
木嶋  「でも、俺が安アパート借りようったって、結構お金要るけど?・・・そこまで愚劣な事に大量需要があって何百万も動くだなんて・・・」
水崎  「いじめと一緒ですよ。いじめってどんなに叩かれても再発するでしょ。暴力はやりたいからやってるんだから、止めようったって・・・」
木嶋  「そんな事わかってる。」
  話の腰を折られてむーっとなる水崎。

要   「10日以上前に怪物に食われて死んだ奴らのパソコンのアクセスログを接続電話会社から調べた所、同様詐欺事件って事で2課が調べてた、所在不明の同一ネットアイドル系中傷用プロバイダーにアクセスしてるらしき事が判明。が、以降の死者がアクセスしているのはまた別の幽霊サーバーであり、根本的にそれがどうモンスターと関係あるかは見当つかず。現時点で判明した概要は以上である・・・と。」
木嶋「・・・報告書棒読み。」
要 「スマン;・・・・・・後、おまえの言ってたデカいモンスターのいた反世界のビルの件だが、近々営業開始で急ピッチで建設が進められてる某ITなんとかって情報センタービルらしいな。殆ど建築も終了しつつあるって事だが、現在はいまだ無人の状態だ。」
  電話機に話し掛ける綾瀬。
綾瀬 「・・・で、要さんに話したインテグラルの試作チップの購入者の件なんですが・・・」
水崎 「・・・・俺まで蚊帳の外だったんですか??!!」
  悲鳴をあげる水崎。

 その頃。秋葉原・パフェ「フリ×フリ」。
オフィスでマスターが、戻ってきて9時でバイトをあがったリカに何かの話を持ちかけている。
 話を聞いていたリカの顔がこわばり、青ざめている。
リカ「そんな!私・・・・・・できません!!」
 泣き出してしゃがみこむリカ。
 リカはパニックを起こしていた。別の店員がなだめようとする。
リカ「断ります!嫌です!絶対!!」
マスター「リカちゃーん、そんな事言わずにさぁ・・・頼むよぉ・・・’お金も払う’し・・・」
 その瞬間なぜかリカの語調が変わった。自分でもコントロールできないようだった。
 唖然とする店長。リカの怒声が喫茶店のフロアまで響き渡った。それは彼女の声とは違っていた。
リカ   「 こ  の  !   ヘ  ン  タ  イ  エ  ロ  オ  ヤ  ジ  っ ! 」
  驚く客。数人がスプーンを落とす。
  はっと口を押さえるリカ。店長があっけにとられ、真っ青になって沈黙する。

  深夜・「ソリッドカスタム」店内。
  綾瀬はモニターに向かっており、水崎はいまだ何かの作業中だった。客用のソファー上に寝転がっている木嶋。
  木嶋は今日のリカの事をありていに話したらしい。
水崎  「彼女、悪い娘じゃなかったんですか・・・・・・」
木嶋  「超一流の元精神科医の退行催眠の結果だからね。間違いないよ」
  しばらく後、水崎が口を開いた。
水崎  「俺が昔いた所、今でいう「ネット犯罪対策センター」の前身のような部署で・・・・・俺がコンピューターができるってだけで引き抜かれて、自分も秋葉系でパソコンや無線には強かったし、花形だと思って浮き足立ってたんです。でも毎日の相談なんてくだらない事ばっかりだと思ってて・・・その時、確かに彼女からの通報がありました。彼女の「ストーカーだ」っていう主張通り、チェックはしたつもりだったんですよ。それでも画像だとか色々みて、掲示板でも圧倒的に多人数が彼女の悪口言ってたんで、やっぱいつものパターンか、と思って、俺・・・あの女の子を、信じてやれなかったんです・・・」
  綾瀬が話し掛けてきた。
綾瀬  「問題は相手がファイヤーウォール状のを持ってるかってことで・・・なあ、結局これとサイズを同じにして・・・・」
水崎  「・・・・・・・・」
  頭をかきながら机に戻る綾瀬。
  木嶋はずっと天井の蛍光管を見つめている。
水崎  「対人関係苦手で、他人の愚痴を聞くのも嫌で、逃げたくなって、結局は分室長にひきこもったんですよ、俺・・・」 
  木嶋は慰めの言葉をかけようかとも思ったが、やめる事にした。
  人生で責任を感じる事は決していけない事じゃない。 心にとげの刺さっていない人間なんか、ロクなもんじゃないからだ。
  再び、綾瀬が声をかけてきた。
綾瀬 「あー、ちょっといーかな?(笑)」
  ん?となる、木嶋。
綾瀬 「あ の ね ? ・・・スパイソフト状プログラムが携帯から見つかったんだけどさ。なんかガキの遊びみたいに単純なもんなんだよねぇ; 常時画像データをハッカーに垂れ流すってだけの。・・・で、ちょっと俺風にウイルスをいじくってみたんだけどー」
木嶋 「・・・・・・・」

  翌日。木々から差し込む木漏れ日。
リカ  「キャーーーーーー!!!♪♪♪」
  狭山丘陵の森林にあるフィールドアスレチック場。
  木嶋がVi:に時折変身して、フィールドワークをする、あの山林のすぐ近くのアスレチック場だった。
  ロープでつられた丸太の握り手にしがみついたリカが上からすべりおちてくる。   木嶋も白衣を脱いで運動を楽しんでいた。
  縄を網状に組んだところを渡ったり、木製のテコのようなものを動かしたり、
  木製のトンカチで木の上を叩くと大きな音がしたり。
  太くなったり細くなったり、段差のある丸切り株上を渡ったり、
  丸太で組まれた色々なコースを、競争するように駆けていく二人。

リカ 「ヤーーーッホーーーーーーーーつっ!!」
  リカの大きな声が丘陵に響いたが、山じゃないので、やまびこはかえらない。
リカ 「やまびこ、帰らないね(笑)」
  笑う木嶋とリカ。

リカ  「んん!なんか爽快!開放的な気分!!」
木嶋 「うんうん。」
リカ  「冬だと思ったのに、花がもう咲いてるんだねー!」
  足元を見るリカ。
リカ 「木嶋さんって、ぎっちょ?なんか身体のこなしが普通の人と反対な気がするんですけど・・・」
  木嶋はびくっとしたが、リカに悪気が無いのに気づき、照れたように笑った。白衣をひっつかむ。
木嶋 「じゃ、次のコース・・・と」
  結構初心者にはきついかもしれない大人用コース。
リカ 「うえーん、待ってー・・・・・・(;;)」
  リカはどうも運動音痴っぽかった。

  同時刻、秋葉原万世橋警察署前。屋上から飛び立つヘリコプター。
  周辺にやじ馬が群がっている。
  かなり大型の放水車両数台が停車され、放水塔を上に上げて行く。
通行人A「なんなんだ?こりゃあ」
通行人B「防災訓練だってよ!」
  警察署の屋上には既にヘリによって搬送されたタンクホーネットと、
  ミラーワールド突入用の大型ミラーが待機していた。セットアップしている科研員達。
  通行規制状態の路上。美女とその連れらしき男たちの通行人。美女は見た目は清純を装っているが、遊びなれた軽薄な雰囲気である。
 美女 「あのー、邪魔で通れないんですけどーーお?」
 警察 「すいません、この道これから規制に入りますんで、駅の方から迂回してもらえませんか・・・」
 男 「ネトアNo.1の氏山秋音タソを知らないのでちゅかぁ〜〜〜?ワラ。」
 男 「サイン会に遅れんだよこら!!遅れたら警察の責任だいうてネットで不祥事晒すぞコラ!!」
  男たちはほとんど、ヤクザか金貸しまがいの口調だった。まるで秋葉原の顔役気取りである。
  それを横目で見ている万世橋警察署の正面入り口の警護をしている警官と水崎。
  水崎よりは年上の警官だろうか。放水車の設置終了まではやる事もないので、水崎は話を切り出す。
水崎「ここにはいつ頃から?」
警官「上からの辞令でここに来てから、半年になりますが・・・」
   懐かしそうに語る朴訥そうな警官。
警官「以前いた派出所の頃の事が・・・懐かしいです。心配です。近所の子供たちが事故を起こさず元気でいるだろうか、とか、お年よりが「オレオレ詐欺」に巻き込まれていないだろうかとか、たわいもない事でありますが。でも、元気でいると信じて、今の仕事をがんばるしか無いです。気になる事があったら、元の同僚に電話をかけてみるとか、そんな事でもできる事を大事にしようと思うんですよ。」
  話を聞いていた水崎の顔から少し曇りが消えたようだった。
  敬礼する水崎。
水崎「ありがとうございました!」

  消防車両設置光景を万世橋署の一室から眺める要、水崎からの携帯を受けている。
要  「過去のネット対策部署の被害届け出データ?」
水崎 「はい!死んだ連中のアクセスしていたサーバーと例のウィルスが現実世界でデータを流している先は一致している筈です。で、さっき下で別のネトアとすれ違ったんですが・・・」
要  「次は彼らがらみの被害者が出るわけか・・・」
  要が携帯のまま指示をする。部屋の特捜班員たち、部屋を出て行く。

  狭山丘陵・フィールドアスレチック場。
  二人は約半分のコースをクリアして、途中の木の切り株を切った椅子で休憩をしていた。
  腰からスポーツ飲料を出して飲む二人。小鳥のさえずる声が聞こえる。
  木漏れ日がきれいだった。リスやタヌキさえいそうな気がする。
リカ  「お医者さんって頭いいんでしょ?運動なんかしないと思ってた。」
木嶋  「自分も学生の時は、頭脳労働専門を目指してたんだけどね・・・」
リカ  「なんでこんな所に入り浸るようになったの?」
  ぼーっと語る木嶋。
木嶋  「・・・このアスレチック場、前の彼女に教えてもらったんだよ。」
リカ  「ふーん、モトカノなんだあ」
木嶋  「・・・・うん」

リカ  「結局あの後あの店飛び出しちゃって。大失言でマスターと大ゲンカ。・・・ナンでかまだわかんないんだけど」
  木嶋は聞かなかった振りをした。リカは一瞬いぶかったが、話をつづける。
リカ  「マスターがなんか秋葉原のオタク向けの店の金持ちオーナー集めてナイトパーティーやるとか言い出して。それで、なんかコスプレ系のAVだのなんだのの業者さんも来るらしくて、業者のたっての希望だから君も相手をしてくれとか言われて。有名になれるから、なんていわれても・・・・・」
木嶋  「・・・・・・」
リカ  「また秋葉で別のバイト探さなきゃ・・・」
  木嶋は答えなかった。
リカ  「どこに逃げてもすぐ見つかっちゃうし・・・ネトアのランキングでもなぜか私、万年100位で。どんなに頑張ってもいつも百位。登録するのをやめても、データも消えないでずっと100位のいじめられっ子。不思議でしょ?警察のお兄さんにも話したんだ。水・・・なんとかって人。」
木嶋 「うん。」
リカ  「警察にも見捨てられたって思って。私、どこに言ってもいじめられるし、プライバシーないし。もうどこに言ってもトイレまで盗撮されるって思ったら、どうでもよくなって。みんな見せちゃえーって・・・だから風俗行っても、AV出ても、全然良かったのかもしれない。」
木嶋  「・・・・・・フラストレーションをネットで解消するから・・・ネットに投げる金があるから、・・この国はお金があるから、戦争にならないだけかもしれない。」
  沈黙するリカ。
  木嶋が口を開く。
木嶋 「あの草の名前、知ってる?自分は知らなかったんだ。」
リカ  「・・・・・・?」
  雪どけした所から、ふくらみかけたつぼみが顔を覗かせていた。
木嶋  「他人がどんなに君を観察したって、尾け狙ったって、君が見たこの景色や、この風景は君だけのものだよ。君がここで体験した事は全部君だけの秘密だし、君があの花を見て何を感じたかなんて誰にもわからない。君を追っかけてる誰にも、君の本当の気持ちはわからない。君の心の中は君の秘密で、君の自由なんだから。」
  雪どけの後に草が芽吹いていた。花を咲かせている草もあった。枯れ果てて見えた木の枝には緑の芽が既に吹いていて、
  冬には聞こえなかったカッコーやカケスの声も既に聞こえ、この山にしか咲かない花まで咲いている所もあった。
木嶋  「秋葉原じゃなくたって生きられる所はあるよ。場所を問わず生きてくなら健康は大事だし、パソコンだけじゃ駄目じゃん?・・・・でも。そんなにあの街が好きなんだったら、「助けて」と声をあげれば、本気で助けてくれる人もいるかもしれない。」
リカ  「でも、わたしにもプライドあるし。迷惑かけたくない・・・・」
木嶋  「どうせ人間は最強にはなれないよ。 ・・・弱い時は守ってもらって、代わりに君より弱い子がいたら、君が守ればいい。弱い子が目の前にいても助けられないのなら、プライドなんていらないと思うよ。」
  目の前の世界は美しかった。自然はきれいだな、とリカは思った。
  それでも、遠くに煙って見える都会を見た時、そのドロドロした世界が怖くなる。
  自分を付け狙うストーカーの事も、無関心な人々の心も、自分の心の中のドロドロも。
リカ 「こんなにきれいなのに・・・・・・・」
  涙がこぼれる。

リカ  「怖いもん・・・ほんとは怖いもん・・・生きていくのも、人間も、自分も、怖いよ・・・・・」

  震え出すリカ。発作が起きそうになったその時、その手に触れる手があった。
  リカ、見上げる。5,6歳位の、大きなリュックを背負った女の子がリカの手を触っていた。
  笑顔の少女。
女の子  「ふるえちゃ、だーめ」

  涙目のままぼーっとなる、リカ。
  リュックを背負った子供たちが、小動物のように次々とやってきた。
  子供たちの遠足。長居しすぎてバッティングしたようだ。。
  木嶋とリカの時間は、ここまでだった。

  携帯電話の音がする。
要  「準備完了。5分後に作戦を決行する」
木嶋 「了解」
  子供たちの肩をポンと叩く木嶋。
木嶋  「彼女と遊んでてくれる?」
  子供たち顔を見合わせて、わーい、となる。
子供たち「りょーかーぃ」「ろじゃーーっ♪」
リカ  「え・・・・・?」

木嶋  「僕は逃げろとはいわない。君が病気になったら、自分がただで治したくなるだろうね。でも自分の専門は心の病気じゃ無いから・・・倉田女史に紹介したり、相談に乗ってあげる事しかできない。何もできないんだ。あとのできる事なんて、たかが知れてる。」

  木嶋はリカや子供たちの目の届かない所まで駆けて来た。立ち止まり、正面を見つめる木嶋。
  目前遠くに見えるあの廃棄物処理施設。それを睨み付ける木嶋の横顔。
木嶋  「変身!!!」
  木嶋、ライダーVi:に変身する。直接ブルーに変身したVi:,翼を開きジャンプ。
  ライダーの大きな昆虫の羽根が宙に舞った。
  すさまじい羽音を立てて、秋葉原へと急行するライダー。


  屋上で作戦開始を待つ要は作業を見ながら、倉田からの携帯電話を受けていた。
倉田  「最後の警告よ?とにかく、その結果の突発的言語障害、記憶障害、多発不全、その結果の全身機能障害・・・・・・・・・瀕死だった木嶋くんに私がかけた催眠は彼自身だって知らない。木嶋くんは彼自身が「助けたい」と思った人間以外は絶対に救えない。私がそうなるように彼に後催眠をかけた。そうする以外に彼を救う方法は私たちには無かったんだから。ゴミもカスも彼に救わせるわけにはいかないのよ。」
  ひもでくくられた分厚い2つのカルテには
  「 後天的サヴァン性身体機能多発不全症候群 」 と
  「 感情球崩壊症候群 」 の文字が書かれている。
倉田  「あの催眠は木嶋くんがあの時以上の生死の境をさまよわない限り解けない。・・・・・木嶋にとっては彼自身がこの世とは逆の存在なのよ。その心理が彼を、この世の倫理と逆の世界に追い詰めた。木嶋の頑なな気持ちを解きほぐいて表の世界に連れ出そうとしたのは私や城空大学の仲間でも貴方でも無い。美原なんだよ? そして今は彼女はいない。彼の逆人格と彼自身が手を結んだのが緑や青や黄色のVi:なら、赤のVi:はいわば裏。裏にあたる彼は二度と発現させちゃいけないのよ・・・・」

屋上で双眼鏡を見ていた班員が叫ぶ。
治安維持指揮室員「来ました!!ライダーです!」
 
倉田  「彼は旅をしながら自分の世界観を作ってる。それがどんなものかは私たちには分からないけど、私たちには見えない世界観、関連性の像を築いてる。愛であれ、憎しみであれ。味方にせよ、敵にせよ・・・。」
要   「そしてそれらの理想が正人格になり、彼にとっての負の世界観における彼自身が変身後における彼の人格を創造する。」


ライダー、万世橋警察署屋上に着地。全てスタンバイは整い、緊張感が走る。
水崎  「木嶋さん!」
  水崎から投げられた例の携帯を片手でキャッチするVi:。
ライダー「行くぞ!ホーネット!!」
  ホーネット、BEEP。
  VI:がデッキを眼前の鏡にかざす。バイクに乗ったまま、銀色のVi:とミラーモンスターに変身するライダーとホーネット。
  ホーネットの瞳が赤く輝く。突入していく二体の生体兵器。
  突入を見計らうと、屋上の水崎は鏡に背を向けて頭をかいた。
水崎  「あんなもんが効くのかなー・・・」
  ミラーワールドへのディメンションロードを通過する時、ライダーは少女の事を思い出していた。

 「嫉妬っていうか・・・悔しいよ。
・・・君みたいな子が、そういう道にしか行く気にならないのが。」
  少し少女があぜんとした表情を見せた。

 「ボクは後悔すべき時に本気で後悔している子の方が正しいと思う。
・・・人間は神様じゃないんだから、後悔からは逃れられない。
後悔なんか全然しない奴、口先だけの奴もいたりするけど、
僕は心から後悔できる人の方がずっといいと思う。」
 「・・・・・・・・・」

  バックルのカードを全て引き抜き、ホーネットの首に挿入するライダー。
ビートバイザー「TRADING」
  戻ってくるカードを首元のケースに戻す。
  ミラーワールドの秋葉原に到着するライダー。
  空中に飛び出すVi:とホーネット。無人の反世界上空は
  まるでネットワークの暗部を見るようにどす暗く濁っていた。
  Vi:はすぐさま首元からカードを引き抜きベントインする。
ビートバイザー「NEEDLE VENT」
  肩に装填されるミサイル。ホーミングニードラー発射。
  2発のミサイルが螺旋を描き、交差点に激突、爆発を起こす。
  直後、追尾ミサイル群がVi:とホーネットに襲い掛かる。
  Vi:の釣りにひっかかり建造物の隙間から姿を現すドグマスパイダー群がライダーを殺せる悦びに猛り狂う。
ビートバイザー「GUARD VENT」
  放出されるモンスターのミサイル群。着弾爆発。
  煙が消えた後には、ホーネットの翼のコピー体であるS字型大型シールドを持ったVi:の姿があった。
  ブーメランのように盾を投げるVi:。盾がビル壁面のドグマスパイダーを直撃。
  3mのモンスターの身体が真下から一刀両断にされ大爆発する。
  怯えるモンスター達。ライダー、連続ベントイン。
ビートバイザー「SWORD VENT」「STURM VENT」
  転送されるVi:ランサーと強化翼。剣と盾を構えるライダー。
  ライダーは再びシールド投げを試みようとする。が、スパイダー数匹が粘糸を吐き出し、シールド投げを無効化する。
 ライダー、大通りをスパイラル飛行。ライダーを通り越しビルにまとわりつく金属製の粘糸が、螺旋を描くライダーの鋼鉄の羽にズタズタにされる。
 地面にへばりつく1体のスパイダーが直上を音速で掠めたライダーの剣で一刀両断にされる。直後、ソニックブーム。爆発。
 スパイダー群が放出する誘導ミサイル群が反世界を迷走する。
 電化店ビルの1F2Fがこなごなに吹っ飛ぶ。
 崩れるシャトル秋葉原店、ガチャガチャ会館。崩壊するガメルッス秋葉原店、ゆっくりと落ち行く萌え看板。
 リカの働いていたメイド喫茶店内。窓ガラスが吹き飛び、爆風。
 破壊されるミラーワールドのゲームセンター。燃え盛る筐体。
 ソフトショップ、爆発。無数のゲームソフトのケースが中央通りを襲う。
 崩壊していく反世界の秋葉原。

ライダー「こんなにも’モノ’があるから、人が身体を、命をかえりみない」

  狭山丘陵。
  子供たちもアスレチックの休憩時間で走りまわっている。
リカ 「元気そうでいいなあ・・・」
  笑顔の先生。
先生 「そうですか?(^^)」
リカ  「私もあの位の頃が一番楽しかったかもしれない・・・・・・(;;)」
先生 「でも、あの子たちみんな、親がいなかったり、引き取り手のいない子供たちなんですよ?」
  はっとするリカ。先生は笑顔のままだった。
先生  「普通の時期にアスレチックにくると、普通の学校のお子さんとバッティングしちゃうでしょ?そうするといじめられたりするから・・・だからこの時期に来てるんです。ちょっと値段もお安くなるし・・・」
  リカに子供たちが走りよってきた。
子供たち「わーーーーーい!!」
リカの周りを回りつづける子供たち。両手をつかまれたリカは振り回されて目がぐるぐるしてくる。
リカ  「あら?あらら?あれれれれ?」


  神田明神通りを迷走するように、敵を引きつけるように飛行するライダー。
  ライダーに着弾。ライダーは盾を飛ばされ墜落する。
  数で押す事に疑いも感じていない怪物たちの傲慢さ。集まり迫る全モンスター群。
  ライダーが再び万世橋警察署の前に追い詰められたかに見えたその瞬間、

  突然ライダーは、水崎に渡されたあの携帯を持ち、彼らの方に向け突き出した。
ドグマスパイダー群  「ギ・・・・ギギ・・・・?」
  Vi:の持つ携帯カメラのCCDがドグマスパイダーを見つめていた。
  携帯に焦点を合わせるドグマスパイダー群の目。そしてその視線にハッキングをしかけ、
  スパイダー達の脳内に、Vi:の持つ携帯の画像が、彼ら自身の姿が移りこんだ瞬間、
  彼らの視界が砂嵐と共に完全に消えた。

  ショートして火花を散らすスパイダー群の頭部。煙を吹き出している。
  水崎の渡した携帯には、綾瀬の仕組んだ暴走系プログラムが仕掛けられていたのだ。
  蜘蛛たちの仕掛けたスパイソフトに偽装されていたので蜘蛛たちが気づく事は不可能だった。
  時間があるならばモンスターたちも「ワクチン」を作れたかもしれないが、
  その一瞬の隙だけで、ライダーが全モンスターを倒すには充分だった。
  ニードルとミサイルを大量放出するタンクホーネット。
  ドグマスパイダーたちの表面を覆う殻が砕けひび割れていく。
  ライダーは警察脇に停車してあった放水車両たちに向かい、
  次々と放水栓をひねった。放水車群の先端から噴出す大量の水。
ドグマスパイダー「!!!!!」
  凄まじい量の水が給水ホースの先にある神田川から吸引され、車両を通じてドグマスパイダーに放出されていく。
  ライダーはホースを放水車からひきはがしジャンプ、空中静止したまま水圧でのたうちまわる放水管を力技で振り回す。
  交差点付近に集中するドグマスパイダー集団の全身と交差点周辺全てが水浸しにされた。
ライダー 「ホーネット!」  
  グア・・・・・・・・・・・・・・・・・ンンン!!

  ビル上層の給水塔群が次々と爆発を起こし、スパイダー達に大量の水がふりかかる。
ドグマスパイダー群「ギ・・・・ギギ!ギギギギ!!」
 傷口や手足を自らの電撃でショートさせ、ボトボトと壁面から墜落していくスパイダー。
 苦しみのたうつモンスター。
 ジャンプするライダー。次の一瞬、ライダーの剣と主翼によって頭上の送電線の全てがカットされ、ライダーを殺そうとしていたモンスター全てになだれ落ちてきた。
ドグマスパイダー「グガアーーーー」
        「キケケーーーー」
  飛び散る火花と閃光があたり一面を見えなくする。
  強烈な爆音とともにスパイダーたちが連鎖爆発を起こし、交差点のビルの壁面が崩れ沈んでいった。
  路上にコロコロと転がり落ちる、モンスター達の黒石。
----------------------------------------------
  あるタコ部屋の一室。ジュン!と蒸発音がする。
  キーボードを叩いていた男がギャ!と一声叫んで倒れ付した。
----------------------------------------------

  中央通り側の3,4体のモンスターが攻撃を逃れている。
ライダー 「逃がさん!!」
ビートバイザー 「 PANZER VENT 」
  ホーネットの主翼と足、手砲のコピー体が転送され、ライダーは重戦車形態に変形する。
  戦車形態のVi:に直撃するが、爆炎の中から現れたライダーの姿は傷ひとつ負っていない。
  数匹のモンスター。ミラーワールドを中央通りから蔵前橋通りへと左折していく。
  ライダーの主砲が火を吹く。ソニックブームで砕ける左右の側壁のコンクリート。
  1体のスパイダーが直撃を受け爆発し、もう2体が更に逃れようとし、昭和通りに爆風で投げ出された。
ライダー 「逃がさん!!!」
  更に彼らの行く手のビル給水塔群を砲撃するホーネット。爆撃でなだれ落ちる水。
  ITセンターの上に寄生していた黒い巨大蜘蛛が唸り声をもらしながら上体を上げる。
  ズル・ズルル・・・と、まるで腐った臓物を引きずるように秋葉原駅の元に落ちる巨大モンスター。
  「グル・・・・グルルルrrr」

  ライダーは昭和通りを右折し逃げていく残り2匹のスパイダーを戦車形態のまま追う。
  すると、正面にあの、巨大な黒い蜘蛛の怪物がいた。
  助けを求めるドグマスパイダーたち。が、擦り寄るように助けを求めたドグマスパイダーを
  巨大グモは触手で根こそぎからめとりガツガツと捕食し始める。ボリ・・・バリ・・バリという音。
ドグマスパイダー「ゲギギャアアアーーーー!!!」
  ボトボトと路上に落ちるドグマスパイダーの足。
  弱小モンスターをたいらげた秋葉原ステージのボスが嘲笑する。
  ネクロスパイダー「グルグルグルグrrrrr・・・モ”エエエエエエ!!!!!」

  大型ミサイルの直撃を受けるVi:。周囲に臓物とビルからつながるケーブルを撒き散らしながら進んでくるネクロスパイダー。
  パンツァーベントの主砲発射。しかし、ネクロスパイダーは触手をネット状に展開させ、それを防ぐ。
ライダー 「!!!」
  突撃してくるスパイダー。ライダーは主翼の盾でそれを防ぐが、再度中央通りに弾き飛ばされ変形が解けてしまう。
ライダー 「くそっ!!!」
  ホーネット、ライダーの元にホバリングしてくる。
  ライダー、首元の全カードを引き抜き、ホーネットにローディング。FINAL VENTのカードを引き抜く。

  その一瞬、知らない少女の声が響く
少女の声  ≪駄目!!!≫
  はっとするVi:の隙をついて、ネクロスパイダーのミサイル群がVi:の足元や周囲の空間に着弾する。
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※都内某所
  耳にイヤーワッフルをつけた少女の後ろ姿。
「あれ・・・・・・?」
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  吹き飛ばされ、倒れるライダー。
  傍らのアダルトビデオののぼりや看板の立ったショップが爆発する。窓ガラス。
  路肩に立てかけられていた裸のAV女優ののぼりが一瞬に燃え上がり、布が裂けた。
  無人のミラーワールドで、その光景を見つめるライダー。

  その瞬間、人間の家畜化・・・デスヤプーと戦っていた彼にとって、
  もっとも悲しむべき、最も恥ずべき存在が、
  なぜだかわからないが、大切でかけがえのないものに思えた。   胸を押さえながら立ち上がるライダー。
ライダー  「俺は・・・・・・」

  胸に当てた「右手」が「左胸」に当てられている事に、はっと気づくライダー。

  ライダーが背負うは、生身の人間の命。
  眼前に対するは、無機の怪物。
  木嶋はこの世界でだけ、自らが「普通の人間」でいられる事を知った。

  ライダーの傍らにスライド着地するホーネット。ライダーはファイナルベントのカードを再度戻す。 ビートバイザー「Return」
  トレーディングで戻ってきたカード群を首元に隠すVi:。
  ネクロスパイダーが触手を放出する。
  放出された触手がライダーの身体にからみつき、がんじがらめに縛りあげていく。
  VI:の脳裏に浮かぶ、秋葉原を歩いていた人々の明るい姿・・・・

倉田の声(電話) 「・・・彼自身が幸せになれる事はもう無いかもしれない。でもね?例えかりそめの、一瞬だけのものであっても、ほんの少しの真実が彼を癒す事はできると思う。医者だから癒して代わりに癒されるとかじゃなくて、人が少しでも真実に生きるなら、それが彼を癒すことはできると思う。私はそれを、信じてる。」

  ネクロスパイダーの嘲笑。ビートバイザーの声が響く。

ビートバイザー「ナパームベント」

  ライダーの身体にからみついた蜘蛛の糸が燃えさかる。Vi:の両肩が火炎放射器と化し、地獄の業火がネクロスパイダーの触手を伝い、その身体にたどり着き、燃え上がった。
ネクロスパイダー 「ゲ・・・・・ギギャアアアーーーーーーーーーツツツ!!!」
  ライダーが次の一瞬炎を向けたのはネクロスパイダーの足元に累々と転がる
  下層モンスターの死体だった。
ネクロスパイダー 「!!!!!」
  小型モンスターの手足の不発ミサイル弾が誘爆して巨大グモを襲う。
  燃え盛る十数体分の地獄の業火。
ネクロスパイダー「グ・・・・ギャ・・・・・グギャアアアアアアアーー!!!!」
  火達磨になる巨大モンスター。

  ライダーが最後のカードを引き抜く。ベントイン

ビートバイザー 「 PANZER VENT2 : グラビティキャノン 」

  戦車形態に変形するVi:。上空にタンクホーネットがホバリングし、
  全ミサイルとニードル弾の砲口ががんじがらめになったネクロスパイダーに向いた。
ネクロスパイダー 「!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
ライダー 「EXPLOSION!!」
  全弾放出。火を吹くライダーVi:とホーネットの4門の主砲。
  ニードルで砕け散るネクロスパイダーの身体に直撃したのは重力弾だった。
ネクロスパイダー「お・・・お・・・・グオオオオオオオオオオオオツツウツ!!!」
  ゴーーーーーーーーーーーーーーーーーン!!!という音を立てて爆発するスパイダーの身体。
  直後爆縮。砕けていくスパイダーの装甲がどんどん肉体にめり込んだ重力体に吸い込まれていく。
ネクロスパイダー「グ・・・ウ"ーエヤアアアアアーーー!!!」
  首を左右に振りながら死にたくない・・・とでものたうちまわるスパイダーの身体の
    腕が砕け、足が砕け、頭蓋が砕け、
  どんどん周囲の砕けたアスファルトやガラスや下級モンスターの死体と共に黒い球体に吸い込まれ、
  とうとうミラーワールドの秋葉原から消滅していった。

  静寂を取り戻すミラーワールド。
  ライダー、地上にホバリングするホーネットに飛び乗り、上空へ、元来た鏡へと飛び去る。
  その後崩壊したミラーワールドの上空が水鏡のようになり、映し出された街が反転して、
  崩壊したミラーワールドの秋葉原は、新宿のように再び元へと戻っていった。


  某ITビル、某階。
  要に命令された特捜班は、現実世界で建築中の上階の
  今はまだ使われていない筈の部屋の前にたどりついていた。
  全ビルはいまだ整備中であり、まだ入居者等はいない筈である。
  銃をかまえ、目配せし、突入していく彼ら。次の瞬間、彼らは目を疑った。
特捜班員「な・・・なんだ・・・・これは・・・・・・・・・・」
  そこはほとんどパソコンマニア、アイドルマニアの部屋であり、
  コスプレやアイドル、アダルトビデオ女優のビデオ、DVDや、無数のパソコン本体、モニター群、ハードディスク群、配線群で埋め尽くされている。
  蒸発したかのように首から上が消えうせている死体。転がっている血まみれのヘッドギア。


  万世橋警察署の屋上に戻ってくるライダーとホーネット。通常体に戻ったライダーの身体は、ズタボロであちこちから血が流れていた。
  両手をついて、くず折れるライダー。かけよる科研スタッフや要、水崎たち。
水崎 「モンスターは・・・?!!」
  ライダー、顔を上げてうなづく。全員、歓声をあげる。満足気な要。叫ぶ水崎の声が秋葉原に響いた。_
 両手をガッツポーズにして空にかざす水崎
水崎 「くーーー・・・ヤターーーーーっ!!」

  狭山丘陵。着地し変身を解いた木嶋がフィールドアスレチックセンターにいるはずの少女を探す。
  楽しそうに笑っている擁護施設の子供たち。申し訳なさそうな顔の引率の先生。
リカ 「た〜すけてーー〜〜」
  少女は何人かの子供にもみくちゃにされ、その下敷きにされていた。
  じたばた手足をばたつかせるリカ。
  木嶋はその姿があまりにマンガチックなので笑いころげた。


  数日後。秋葉原駅近くの某電化店前。
木嶋 「あ。」
リカ  「どーもー(^^)」
  駅前の遊歩道で会話する木嶋とリカ。 木嶋は綾瀬にお礼の差し入れを持っていった帰りだった。

木嶋  「それで、結局・・・・」
リカ  「秋葉原は自分の育った町だし・・・秋葉系としては離れられませーん♪」
  一瞬心配する木嶋。
リカ  「なーんてね、うそうそ(^^)。ほら、こないだ行った青山の喫茶店?・・・あそこで働かせてもらう事に決めたんだー」
木嶋  「ヘーっ!!」
少女  「倉田先生が、あこがれる仕事場があるならそっちにしてみれば?って勧めてくれたの。私が働くならそこにもお茶しに来てくれるっていうし・・・で、今日はこないだの店にまじここのバイトやめるって言って来た。」
木嶋  「そうなんだ・・・」
  少し感動する木嶋。
  循環病はこんなことで治るなんて思えない。
  ・・・いつ発作がめぐってくるかわからない。小康状態を保てるのもいつまでかわからない。
  それでも・・・と思う。

少女「てへへ・・・(^ ^)」

少女「それじゃ!」
  手を振る少女。声にならないまま手をあげて応える木嶋。笑顔で別れる二人。
  少女は、本当は大好きな街へ、木嶋はその街を背にしてゆく・・・
  人が医者と付き合うのは病気の間だけだ、と思った一瞬。
  少女が振り返り、指先をピストルの形にして、木嶋に向けた。
リカ 「 Get You♪ 」
  駆け出す少女。
  木嶋は始めて幸せな気分になれたと思った。

  立ち去る木嶋。電化店のある駅前を立ち去る。
  その後で流れているTVのニュース。
  水崎が警察署前で出会った3人の男達の顔が映し出されている。
キャスター  「昨日、秋葉原路上で、同時刻にメール配信を受けた3人の男が同様の配信を受けたトラック運転手の不注意運転により全員死亡するという事件が発生しましたが、今度はその被害者と同じインターネットアイドルランキングサイトの別主催者が建築中の情報センタービルで変死体として発見されるという奇怪な事件が明らかとなりました。」
  映し出される、ヘッドギアをかぶっていた男。
キャスター  「この人物は秋葉原に社屋を構える、ネットアイドル専門インターネットプロバイダーの人物ですが、先の事故死した人間と同様、別に開設していた中傷サーバーを使用して故意に情報を操作、下位に落としたネットアイドルを上位にあげると偽っては援助交際を迫り、AV・風俗業者等に売り渡していました。同様の行為により彼らは月間数千万円の収入を得ていたと思われます。捜査課は過去の被害届けからこの人物を追っていましたが、ネット情報の書き換えによりビルの無人テナントに隠れ住んでいた模様です。ネットランキングの2大巨頭とも言われたこれらのサイト運営者のスキャンダルにマニアたちは困惑の色を隠せません。また、彼のパソコンは何重もの形で完全にプロテクトされ、部屋からは数十人分の顔写真に「死ね」「怨」と書かれたリストが発見されましたが、記録ディスクの容量は天文学的容量に及ぶ為、データの解析には数年を要するとの事です・・・・・・では次のニュース・・・」



第5話−完

モンスター : ドグマスパイダー

        ネクロスパイダー


        登場。




予告


上野公園で人々とともに、非番の刑事課の人間が花見をしている。桜の花びらが舞う。 
1課の刑事「花見だねえー・・・・」
1課の刑事「上野だねえー・・・・」

治安維持指揮室内
水崎 「連続窃盗事件の犯人がモンスター?。」

畳にあがりこんで、おじいちゃんの脱臼を処理している木嶋。
木嶋 「おじいちゃん、こんな無理しちゃ駄目でしょーが!」
おじいちゃん 「イテエエエ!!」骨の鳴る音。

前出同ポジ
水崎  「とっぴ過ぎませんか?それ・・・」
要   「同一贋作家の作った偽物が窃盗されている、というのは判る。だが、その贋作家が実は贋作家ではなかったとしたらどうだ?」

茶系メイド服のリカ。
リカ 「いらっさいませーー!!」
後ろで困った笑いを浮かべているマスター。

美術館、一枚の絵の前で会話し続ける木嶋と少女。
少女 「絵には魂が宿る・・・っていつから言われ始めた事なんでしょうね」



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5話。やっと終わりました。
なんていうか、ネット問題ってのは色々あるけど、自分のずっと思っていた部分は
全部テーマとして出せた気がします。
だから自分の作品でネットをテーマにする事は当分無いんじゃないかと思います。
大した内容でも無いのに劇場版並に容量食っちゃったよ・・・(;;)

4話5話は4話を書いたかなり後に秋葉原風俗店に爆発物しかけようとした高校生が出たり、
秋葉原の火災等もあって(しかも時期がこの冬ごろと重なっちゃってるし)、
現実が追いついてくる、という感覚に手間取って(カッコイー!)
最後まで書ききるのにかなり根性が必要でした。モンスターも最悪級だし。
まぁフィクションなので、最後まで書けたという事でした。
どうしても今日UPしたかったので、九●祭に遊びに行けなかったよ・・・(爆

まだまだ書きたい事いっぱいあるけどとりあえず一休み。
「イノセンス」見てきた後にでもUPします。でわでわ。
(2004_3/6 up)


追記:
5話解説です。

実はラストのネクロスパイダーとの戦いのシーンでは、モンスタートリックベント=ホーネットマルティプライズが初使用される予定でした。実際にはVi:はナパームベントから直接パンツァーベント2=グラビティキャノンに行ってしまうわけですが、これはあの戦いの部分で心情的にタンクホーネットを関与させたくなかったというのがあります。なんだかんだ言ってもホーネットにはVi:の感情はわからないので(これは要警視正も実はそうなんだけども)

絵理花という名前は自分の同人作品「エグ」に出てくる女の子の名前と、間違いなく人形のリカちゃんとの組み合わせです。つまり実際にモデルはいないという事もなし。ただ、Vi;という作品はモデルになってる実在人物が各キャラ最低3人はいるというお話で、りかにも数人以上、場合によっては10人近くのモデルがいたりします(大方コスプレイヤーだったりするけれども。だからリカちゃんなわけで)。
最初は彼女をコスプレイヤーにさせようかと思ったんですが、それだとかなり閉鎖的な物語になってしまうし、彼女に関しては「父親と過ごしていた元々の秋葉原を知っている少女」という設定にしたかったので、レイヤーにするのをやめたのでした;
その分、なんか一人のキャラに重いものを負わせすぎたんじゃないかって事で反省してたりするわけなんですが・・・。

秋葉原でリカが店のマスターに変なパーティーへの参加を強要されそうになるシーンは最後まで入れるかどうするか迷ったわけなんですが、これも実は実際あるケースらしく、昨年の「月刊G●N!12月号」にも掲載されてました。
風俗資本の秋葉原のコスプレ喫茶が夜になるとゴムつき風俗の深夜営業を行うという記事で(写真のみフィクションという記事だった)、2chにはスレもたったわけなのですが(http://comic.2ch.net/test/read.cgi/cosp/1070909610/ 秋葉原発ゴム本番できるコスプレ喫茶)、
即座になぜか「でっちあげだ!」等と叫ぶ集団が書き込みに現れ、スレ機能をまひさせた上、なんと2chのスタッフが「スレッド自体を別の「http://comic.2ch.net/comictr/ 」という場所にコスプレ板から移動させた上、ついにはスレ自体を2ちゃんスタッフは消滅させてしまっていました。
 >総合裏自治スレッド@ゴミ箱
 >2 名前:塵 :03/01/18 16:46 ID:???
 >comictrは書き込みのある無しにかかわらずしばらくすると
 >消されるからそれまでに何らかの自治活動をしないと。
にしても結局の所あんな所にスレ一つ丸ごと移動させる事はまずこれが「2chスタッフにとってヤバイ、ROMのレイヤーに知られてはならない話題」な事だったのは間違いがない。いくつかのコスプレ喫茶が性風俗店と同資本で運営されている事は2chですら有名なわけですが、コスプレ性風俗店というのも元々はパソコン雑誌のメガ*トアだかファ*タジェン*だかが企画して実現化させたのが第1号店だった事は有名な事です。これにTOPページにも貼った某人物からのメールの
 >出版のかなり多くが2ちゃんねるに協力的だ。グルと言っても良い。
 >実際、雑誌編集者のかなりの人数が削除人などに就任しているらしい。彼らには「鉄の掟」
 >と呼ばれる固い守秘義務が課されている。このことは、二階堂の掲示板における当事者の
 >やりとりから読み取れるし、流出メールのやり取りをみても分かるかと思う。
との文章を考え合わせれば、コス風俗店やコス喫茶を企画している連中か、各エロ系やゴシップ系雑誌の編集者連中が「やばいよ」という事で、スレを移動させた可能性も出てくる。あくまで可能性なんだが。
大体そういう性的深夜営業をやっていたコスプレ喫茶があるとすれば、その利用者もいる筈で、大体2chのスタッフ等に参加している連中は「情報を利用したくて2ch参加している連中」だろうし。
何にしても、その性的深夜営業のコスプレ店周辺か取材関連に関係のあるスタッフが(つか深夜営業を永続化させたい側が)、告発スレッドを「ゴミ箱」にまで移動してもみ消したんじゃないか、ってのが自分の見た所です。本番ってのもまずい。
要は徹底して2chのスタッフはコスプレイヤーの味方では無い、って事なわけですが。知られてはならないから消したのだろうし。余談。

他にも今回もUPできなかったタンクホーネットとか色々あるわけなんですが・・・
#6話は遅れまくってます。りかちゃんは今後も出ますが・・・モデルの子の数人が・・・な事になってしまってるので、結構自分も鬱で書くのが遅れ遅れになるかもしれません。
現実の警察にもかなり失望させられる事が多かったし。所詮Vi:で自分が描いてる警察機構ってのは幸せな理想像に過ぎないんだな、と幻滅させられる事が最近多かったので、Vi:自体のストーリーもそっちに流れていくかもしれませんが、気長に見てください、って感じです。
#5話書いてて精神的にきつい時には龍騎EDの「果て無き未来」と555EDの「The People with NO NAME」(名無しは基本的に嫌いだけど;)を聞いて元気出してたりしました。いい曲だよね。まじでこの2曲には感謝してるって感じです(^^);
(2004/7/10 up)